日本におけるPCI技術の進化と抗血小板療法の変遷

薬剤師が語る-薬の歴史と-治療戦略の変遷 心筋梗塞
薬剤師が語る-薬の歴史と-治療戦略の変遷

日本の循環器治療において、冠動脈インターベンション(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)はこの数十年で飛躍的な進歩を遂げ、それに伴いPCI後の抗血小板薬治療(DAPT:Dual Antiplatelet Therapy)の戦略も大きく変遷しました 。本稿では、**日本におけるPCIデバイスの技術的進化(バルーン拡張術→ベアメタルステント→薬剤溶出性ステント)と、それに伴う抗血小板薬療法の変遷(チクロピジン→クロピドグレル→プラスグレル/チカグレロル)**を、導入時期やガイドラインの変遷、主要エビデンスを踏まえて詳細に解説します。薬剤師が臨床現場でDAPT管理や服薬指導に活用できる知識を重視し、各薬剤・デバイスの位置づけ、有効性・安全性、DAPT期間の最適化について論文レベルの情報をまとめます。

PCI技術の進化:バルーンからBMS、DESへ

バルーン拡張術(POBA)の登場と課題

経皮的冠動脈形成術(PTCA)は1977年にスイスでグルンツィヒ医師によって世界初の成功例が報告され、低侵襲で画期的な治療として注目されました 。日本でも1981年、小倉記念病院の延吉正清医師が国内初の冠動脈バルーン拡張術を成功させており 、1980年代には狭心症や心筋梗塞に対する新たな治療法として急速に普及しました。バルーンによる冠動脈拡張(いわゆるPOBA: Plain Old Balloon Angioplasty)は開胸手術なしに狭窄を拡げられるメリットがある一方で、再狭窄や急性閉塞といった課題が顕在化しました 。具体的には、バルーンのみでは血管壁の弾性戻りや血栓形成により手技後数週間~数ヶ月で30~50%もの高率で再狭窄が生じ、追加の再開通治療が必要になるケースが多かったのです 。また、拡張に伴う内膜の裂傷から急性冠閉塞(急性の血栓詰まり)が発生し、緊急バイパス手術が必要となる深刻な合併症も問題でした 。このように**初期PCIの課題は「拡張成功率の向上」「急性閉塞の防止」「遠隔期再狭窄の抑制」**でした。

ベアメタルステント(BMS)の導入とDAPTの始まり

再狭窄と急性閉塞の克服策として1990年代前半に登場したのが冠動脈ステントです。ステントは金属製の網目チューブ状デバイスで、バルーン拡張後の血管内に留置することで血管の内腔を物理的に支え、拡張した径を保つ役割を果たします。日本では1993年にステント治療が導入され、バルーン後の血管壁の「縮み」現象(弾性反跳)を解決しました 。ステント留置により急性期の閉塞リスクは大幅に低減し、短期成績が飛躍的に向上しました。またBMS(ベアメタルステント)は再狭窄率もバルーン単独より減少させましたが、それでも約20~30%の症例でステント内再狭窄(ISR)が発生することが徐々に明らかになります 。BMSでは血管内に留置した金属が異物反応を引き起こし、過剰な新生内膜増殖(血管の瘢痕化)によってステント内が狭窄する現象が避けられなかったためです。

BMS時代には、ステント血栓症(ステント留置部位での血栓形成)を防ぐ目的で抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)が確立されました。1990年代半ばの欧州における試験では、ステント留置後の抗凝固療法(ワーファリン等)に代えて「アスピリン+チクロピジン」の併用が安全かつ有効であることが報告され、従来のヘパリン・ワーファリン療法より心イベントと出血合併症の両面で有利と示されました 。例えば1996年のISAR試験ではBMS留置後のDAPT(アスピリン+チクロピジン)が抗凝固療法に比べ30日間の心イベントと出血性合併症を有意に減少させています 。また1998年のSTARS試験やFANTASTIC試験でも、DAPT併用はワーファリン併用に比べステント血栓症と出血リスクの両方を低減することが示されました 。これらのエビデンスを受け、アスピリンとチエノピリジン系抗血小板薬(当時はチクロピジン)の併用がステント治療後の標準となり 、日本でもBMS時代以降すべてのPCI患者にDAPTが導入されました。BMS留置後のDAPT期間は概ね1ヶ月程度とされ、ステント内皮化が進むまで(=血栓リスクが高い期間)の一時的な併用が推奨されていました 。なお当時用いられたチクロピジンについては後述しますが、重篤な副作用リスクから投与初期2ヶ月間は2週ごとの血液検査が行われるなど、安全管理が重要な薬剤でした 。

薬剤溶出性ステント(DES)の登場と長期DAPT

ステント治療の次なるブレークスルーは、薬剤溶出性ステント(DES)の開発です。DESはステント表面に抗増殖作用を持つ薬剤をコーティングし、留置後に血管内へ薬物を徐放することで新生内膜の過剰増殖を抑制し再狭窄を大幅に低減する革新的デバイスです 。第一世代DESとして代表的なシロリムス溶出ステント(Cypher)とパクリタキセル溶出ステント(Taxus)が2002~2003年に欧米で承認され、日本でも2004年3月に初のDES(Cypher)が承認され同年8月から販売開始されました 。Cypherは日本初のDESであり、従来のステントに比べて再狭窄発生を劇的に低減し、細径血管(2.5mm以下)へのステント治療も可能にしました 。実際、DES導入によって再狭窄率はBMSの20~30%から一桁台にまで改善し、PCIの長期成績は飛躍的に向上しました。DESの普及により「遠隔期の再狭窄予防」というPCI最大の課題が克服され、PCI治療は成熟期を迎えたとも言われます 。現在では国内で留置される冠動脈ステントはほぼ全例がDESであり、BMSは特殊なケースを除きほとんど使用されなくなっています 。

しかし、第一世代DESには新たな課題も発覚しました。それはステント血栓症のリスク増加です。DESは薬剤コーティングによって内膜の治癒(内皮細胞による被覆)が遅れがちで、特に初期のDESではポリマー(薬剤担体)の刺激による炎症も相まって、留置から数ヶ月~1年以降に**“遅発性のステント血栓”**が発生する例が報告されました 。2006年頃には欧米学会でDESのLate Stent Thrombosis問題が大きく取り上げられ、日本でも厚労省が安全対策としてCypher留置患者への十分な情報伝達を指示する通知を出しています 。このリスクに対処するため、DES留置後のDAPT期間延長が図られました。日本でも2006~2007年頃から「DES留置後は少なくとも12ヶ月間のDAPT継続」が推奨されるようになり 、実際2007年改訂の急性冠症候群ガイドライン等でもDES後1年程度のDAPT継続が推奨されています(当時は明確なRCT根拠はありませんでしたが、安全策として採用)。このように、第一世代DESの登場はDAPT期間を延長させる契機となりました 。

DES技術自体も改良が進み、2000年代後半~2010年代には第二世代DES(エベロリムス溶出ステントやゾタロリムス溶出ステント等)が開発されました。第二世代DESではコーティングポリマーの生体適合性向上やステント金属骨格の薄型化などにより、ステント血栓症のリスクが大きく低減しています 。その結果、新世代DESでは「長期DAPTを必ずしも必要としないのではないか」という検討が行われるようになりました 。実際、日本から報告されたSTOPDAPTやNIPPONといった試験に代表されるように、新世代DESでは6ヶ月や3ヶ月、さらには1ヶ月といった短期間のDAPTでも安全に運用可能であることが示唆されてきました (詳細は後述)。こうしたエビデンスを受け、近年のガイドラインでは患者個々のリスクに応じてDAPT期間を柔軟に短縮する方向にアップデートされています 。DESの進化はDAPT戦略の変遷に直結しており、まさに**「デバイス進歩と薬物療法の歩調合わせ」**が求められてきたと言えます 。

抗血小板薬治療の変遷:チクロピジン→クロピドグレル→プラスグレル/チカグレロル

PCI後のDAPTに用いるP2Y12受容体拮抗薬も、この20年余りで世代交代が進みました。日本で使用可能な経口P2Y12阻害薬は現在4種類(チクロピジン、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロル)ありますが、それぞれ導入時期や特性が異なります。ここでは各薬剤の日本における導入と臨床的位置づけ、エビデンス、注意点を整理します。

チクロピジン(パナルジン)-初期DAPTを支えたが副作用に課題

チクロピジン(商品名パナルジン)は第1世代のチエノピリジン系抗血小板薬で、日本では1981年6月に承認・9月発売された古参の薬剤です 。作用機序はADP受容体(P2Y12)の不可逆的遮断であり、血小板の凝集能を抑制します。当初は脳梗塞の再発予防やバイパス術後の血栓予防などに使われていましたが、1990年代に冠動脈ステント治療が始まると、DAPTの一剤としてPCI領域でも重用されるようになりました 。前述の通り、ステント黎明期の臨床試験でアスピリンとの併用効果が実証され、1990年代後半は「アスピリン+チクロピジン」が世界的な標準DAPTとなりました 。日本でも2000年代半ばまではPCI後DAPTにチクロピジンが用いられる機会が多く、発売後20年近く経った2000年代初頭でも年間処方患者数が約100万人にのぼったと推計されています 。

チクロピジンは抗血小板効果自体は十分強力ですが、重篤な副作用のリスクが看過できません。血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)や無顆粒球症(好中球減少)、重篤な肝障害などが稀ながら報告されており、特に投与開始後2ヶ月以内に集中して発現する傾向があります 。国内でもチクロピジン投与によるTTP発症例が累計20例以上報告され、死亡例も含むことから、1998年に添付文書へ注意喚起が追記され、1999年には「警告」欄に格上げされました 。この警告では「投与開始後2ヶ月間は2週に1回の頻度で血球算定と肝機能検査を行い、異常があれば直ちに中止処置をとる」こと、および患者にも初期症状(発熱、咽頭痛、出血斑など)の教育を徹底する旨が記載されています 。薬剤師もチクロピジン処方時には血液検査スケジュールや症状出現時の対応について患者指導を行う必要があります。

これら安全対策により大事には至らないケースがほとんどですが、実臨床ではチクロピジン服用中に重篤な顆粒球減少やTTPを発症し死亡した報告も散見され、より安全性の高い代替薬への要望が高まっていきました。加えてチクロピジンは1日2回服用が必要で服薬コンプライアンスの面でも課題があり、2000年代に入り後継薬の登場とともに使用頻度は急速に減少しました。現在ではチクロピジンは**「奏功するが他剤不耐容の場合の選択肢」**という位置づけで、DAPTの第一選択に用いられる機会は稀と言えます。

クロピドグレル(プラビックス)-安全性改善でDAPTの第一選択に

クロピドグレル(商品名プラビックス)はチクロピジンの構造を改変して開発された第2世代チエノピリジンです。より強力な活性代謝物を産生し、かつ副作用プロファイルを改善したことが特徴で、1997年に米国FDA承認後、世界120ヶ国以上で展開されました 。日本では承認がやや遅れ、2006年1月にようやく承認・発売となり、本邦でPCI症例への本格使用が始まったのは2000年代後半からです 。発売当初の適応症は脳梗塞や末梢動脈疾患でしたが、その後急性冠症候群(ACS)にも適応拡大され、現在は虚血性心疾患のPCI時やACS治療における標準的抗血小板薬となっています 。クロピドグレルが登場したことで、チクロピジンの持つ重篤な血液障害リスクを大幅に低減でき、DAPTの安全性が飛躍的に向上しました。2000年のCLASSICS試験では、ステント留置後のDAPTにおいてクロピドグレル群はチクロピジン群に比べ有意に有害事象(特に消化器症状や血液障害)が少なく忍容性に優れることが示され、以後チクロピジンからクロピドグレルへの世界的なシフトが起こりました 。日本でも2000年代後半から**「アスピリン+クロピドグレル」併用がDAPTの第一選択**となり、チクロピジンは急速に置き換えられていきました。

クロピドグレルの利点は1日1回投与で良いこと、そして骨髄抑制などの重篤副作用が極めて稀なことです(無顆粒球症発生はチクロピジンの1/10以下と報告)。一方で留意すべき点として、プロドラッグであり肝代謝(CYP2C19)を経て活性化されるため、患者ごとの代謝能力差によって効果にばらつきがあることが挙げられます。特にCYP2C19の活性低下変異(2や3アレル)を持ついわゆる「低代謝型」患者が日本人では約20%存在し、こうした患者ではクロピドグレルの作用発現が不十分になりうるとされています 。FDAは2010年にこの点について黒枠警告を出し、必要に応じて代替療法を検討するよう喚起しました 。日本人にこの遺伝的低反応例が多いことはプラスグレル開発の背景にもなっています(後述)。もっとも、現実には遺伝子検査なしでクロピドグレルを使用することが大半であり、リスク因子(例えば著明なアジア人優位の遺伝背景など)がなければ通常通り投与されています。薬剤師は、クロピドグレル使用中の患者では相互作用と服薬遵守に注意する必要があります。たとえばプロトンポンプ阻害薬(PPI)のオメプラゾールやエソメプラゾールはCYP2C19を競合的に阻害しクロピドグレルの活性化を妨げる可能性があるため、併用する場合は代替のPPIやH2ブロッカーを検討するのが望ましいとされています。またクロピドグレルは服用中止後も血小板機能が回復するまで5日程度要する(不可逆阻害のため)点も踏まえ、抜歯や手術予定時の休薬期間について医師と連携することも重要です。

なお、クロピドグレルは2018年に特許切れしており現在多数の後発品が流通しています。価格面のメリットも大きく、特に安定狭心症のPCI後や心房細動合併例などでは出血リスクを鑑みてより強力な薬を避け、依然としてクロピドグレルが選択される場面は少なくありません。従って薬剤師はクロピドグレルについてもしっかり知識をアップデートしておく必要があります。

プラスグレル(エフィエント)-日本人向け低用量で高リスクACSに対応

プラスグレル(商品名エフィエント)は第3世代のチエノピリジン系抗血小板薬で、クロピドグレルの課題だった代謝のばらつきや作用発現の遅さを改善すべく開発されました。より速効性かつ強力で、個体差の少ないP2Y12阻害を特徴とします 。日本の第一三共が開発に関与した経緯もあり、海外に遅れること数年で2014年3月に日本承認、同年5月発売となりました 。適応症は経皮的冠動脈形成術(PCI)を要する急性冠症候群(ACS:不安定狭心症、NSTEMI、STEMI)およびPCIを要する安定狭心症・陳旧性心筋梗塞です 。発売当初、日本ではACS患者に限定された使い方が多かったものの、後に安定CADにも適応が追加され、現在では広くステント治療を受ける虚血性心疾患患者全般で使用可能です。

プラスグレルの日本における大きな特徴は、その用量設定が海外より低減されている点です。標準用量は初回負荷20mg、維持量3.75mg/dayで、欧米標準の(60mg負荷/10mg維持)に比べおよそ1/3の維持量となっています 。これは日本人集団での第II相試験までの結果から「有効かつ安全な最小用量」を模索した成果であり、実際2014年に報告された日本人対象第III相試験(PRASFIT-ACS試験)でもこの用量で良好な成績が示されました 。PRASFIT-ACSでは、プラスグレル20mg負荷/3.75mg維持群はクロピドグレル300mg負荷/75mg維持群に比べて心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合イベント発生率を23%低減(9.4% vs 11.8%)しつつ、重大出血発生率は両群で同等(約2%)という結果でした 。この試験は症例数の関係で有意差こそ出なかったものの、「日本人でもプラスグレル低用量は有効性を損なわず安全性良好」とのエビデンスとなり 、国内承認の根拠となりました。またグローバル試験(TRITON-TIMI38)ではプラスグレルはクロピドグレルに対し有意な虚血イベント抑制効果を示した反面、出血リスク増大も指摘されましたが、その中で75歳以上の高齢者、体重60kg未満の低体重者、脳卒中/TIA既往者で出血有害事象が顕著だったことから、これらはプラスグレル療法のハイリスク群とされました 。日本でも添付文書上、これらの条件に該当する場合は原則禁忌または慎重投与と位置付けられています 。実際、海外標準用量のプラスグレル10mgは日本人には過量で出血が増えるとの指摘もあり、本邦の低用量設定はきわめて妥当と考えられます 。

臨床的には、プラスグレルは特に急性冠症候群(ACS)の一次PCIにおける第一選択薬として定着しています。STEMIなど高リスクACSではクロピドグレルでは効果不十分(代謝遅延に加え遺伝的低反応者の問題)なケースもあり、より速効で強力なプラスグレルの使用が推奨されます 。2018年改訂の日本循環器学会(JCS)急性冠症候群(ACS)ガイドラインでは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行う患者に対して**プラスグレル(20mg負荷後、維持3.75mg/日)またはクロピドグレル(300mg負荷後、維持75mg/日)**の併用が推奨されています(クラスI, エビデンスA)。この版ではチカグレロルは原則推奨薬としては含まれていません(後年のアップデートで一部記載あり)。薬剤師はプラスグレル使用患者に対し、「1日1回、必ず決まった時間に服用すること」「出血リスクに注意すること」を指導します。プラスグレルはクロピドグレルと比べてCYP2C19遺伝子多型やPPIなどの併用薬の影響を受けにくく、作用も安定しているのが特徴です。なおプラスグレルは不可逆的に血小板を阻害するため、半減期が短くても1回飲み忘れただけで「翌日に効果がなくなる」ことはありません。血小板機能の回復には中止後5〜9日程度を要します。ただし毎日の服用を欠かさないことが血栓イベントの再発防止に直結するため、アドヒアランス確保はきわめて重要です。飲み忘れに気づいた場合はできるだけ早く1回分を服用し、次回が近ければ飛ばして通常どおりに戻すこと(二重服用はしない)が原則です。また消化管出血や歯肉出血など出血傾向が現れた際の対応、手術前の休薬(少なくとも7日間)についても患者と共有しておくと安全です。なおプラスグレルには現在OD錠(口腔内崩壊錠)もあり、緊急時の負荷投与で水なし服用が可能な点など実務的配慮もなされています。

チカグレロル(ブリリンタ)-可逆的阻害薬だが東アジアでは慎重な位置づけ

チカグレロル(商品名ブリリンタ)はこれまでのチエノピリジン系とは構造の異なるシクロペンタントリアゾロピリミジン系の抗血小板薬で、第3世代P2Y12阻害薬の一つです。非プロドラッグであり直接作用型、かつ受容体への結合が可逆的という特徴を持ちます。欧州では2010年12月、米国では2011年7月に承認され、日本でも2016年9月に承認されました(国内製造販売元:アストラゼネカ) 。日本での適応は急性冠症候群(ACS)および心筋梗塞既往患者の再発抑制で、用量は初回負荷180mg、維持90mgを1日2回投与(継続投与1年以上の場合は維持60mg BIDに減量)となります 。チカグレロルはP2Y12受容体を非競合的に変化させて阻害するため、血中濃度が下がれば作用も可逆的に解除される点が他の薬と異なります。また肝代謝(主にCYP3A4)で活性代謝産物も産生しますが、チエノピリジンとは異なりCYP2C19遺伝子多型の影響を受けないため、クロピドグレル抵抗性が懸念される患者にも有効と期待されます。

グローバル試験のPLATOスタディでは、ACS患者においてチカグレロルはクロピドグレルに比べ心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合イベントを有意に減少(絶対差1.9%)させ、一方で非開胸術関連の大出血はやや増加という結果でした。この有用性から欧米ではACS治療の一翼を担っています。しかし東アジア人集団における有効性・安全性には議論があります。PLATO試験のサブ解析ではアジア人でも有効性に大差ないと報告されましたが、日本・韓国・台湾で実施されたPHILO試験や韓国のTICA-KOREA試験では、チカグレロルはクロピドグレルに対して有意な虚血イベント低減を示さず、むしろ出血イベントが増加する傾向が示されました 。たとえばTICA-KOREA試験では12ヶ月間の大出血発生率がチカグレロル群11.7%に対しクロピドグレル群5.3%と有意に高く、主要心イベント発生率に差はありませんでした 。日本人を主体としたPHILO試験でも同様に、チカグレロル群で出血リスク増大傾向が報告されています 。これらの結果から、日本の臨床現場ではチカグレロルの位置づけは慎重になりました。すなわち、「明らかなプラスグレル不適応(例:脳卒中既往)や臨床的事情がない限り、ACS治療ではまずプラスグレルを用い、チカグレロルは代替選択肢」として扱われるケースが多いです 。2020年の抗血栓療法ガイドライン・フォーカスアップデートでも、東アジア人ではプラスグレル低用量療法の成績が良好である一方、チカグレロル標準用量は出血リスクの面でメリットが乏しい可能性が言及されており、現時点ではプラスグレルに軍配という評価がなされています 。

薬剤師がチカグレロル投与患者をケアする際には、1日2回の服用遵守が何より重要です。他のP2Y12阻害薬と異なり可逆的阻害のため、未服用から約1日で薬効が消失してしまいます。「飲み忘れ厳禁」の薬剤であることを患者にも理解してもらいましょう。また主な副作用として呼吸困難感(息切れ)が10%前後の患者にみられます。多くは一過性で軽度ですが、症状が強い場合は主治医に連絡するよう指導します。併用薬では強力なCYP3A4阻害剤(ケトコナゾールやクラリスロマイシン等)との併用に注意が必要で、血中濃度上昇により出血リスクが高まる可能性があります。逆にCYP3A誘導薬(リファンプシンなど)併用では効果減弱の恐れがあります。なお高用量アスピリン(1日150mg超)との併用はチカグレロルの有効性を下げる可能性があり海外では推奨されませんが、日本の低容量アスピリン療法(81mg程度)であれば問題ありません。チカグレロル服用中の患者から「息が苦しい」「出血しやすい」といった相談を受けた際には、安易に自己中断しないよう伝え、必要時は主治医と調整してもらうよう助言します。総じてチカグレロルは有用な薬剤ですが、日本人集団では出血と利益のバランスを見極めつつ慎重に適応を選ぶ段階といえ、薬剤師もその最新知見を踏まえたフォローが求められます。

ガイドラインの変遷と主要エビデンス:DAPT期間最適化へ

PCIデバイスと抗血小板薬の進歩を反映し、国内外のガイドラインもDAPTの推奨内容をアップデートしてきました。日本に焦点を当て、ガイドライン改訂の流れと主要な国内エビデンスを概観します。

ガイドラインの変遷概要

  • 2000年代前半:BMS時代~DES黎明期。日本循環器学会の2002年「虚血性心疾患治療ガイドライン」等では、ステント留置後のDAPT期間は少なくとも4週間とされていました。当時DAPT薬はアスピリン+チクロピジンが基本で、チクロピジンの副作用管理に留意する記載が見られます。DES導入直後は欧米と同様3~6ヶ月程度のDAPTが想定されていました 。
  • 2006~2007年頃:第一世代DESの遅発性血栓問題を受け、ガイドラインや学会声明で**「DES後は12ヶ月のDAPT継続を推奨」との方針が打ち出されました 。2007年改訂のJCS急性冠症候群ガイドラインでは、シロリムスまたはパクリタキセル溶出ステント留置例では原則1年以上のDAPTが推奨されています。当時は国内エビデンスは乏しかったものの、「安全第一」の観点から長期DAPTが広く受け入れられました。併せてこの頃までにDAPT薬はクロピドグレルへの交代**が進み、ガイドライン上もチクロピジンからクロピドグレルの使用推奨へ変更されました。
  • 2010年代前半:第二世代DES普及に伴い、「それでも12ヶ月必要か?」との議論が始まりました。2012年前後から、DAPT期間短縮を検証する臨床試験が国内外で相次ぎます。日本では例えば**RESET試験(3ヶ月 vs 12ヶ月DAPT)やNIPPON試験(6ヶ月 vs 18ヶ月DAPT)が行われ、いずれも短期DAPTで非劣性を示唆する結果となりました 。欧米でもEXCELLENT試験やPRODIGY試験などが報告され、必ずしも全例で1年DAPTは不要との認識が広まりました。ただし高リスクACS患者では従来通り長めのDAPTが推奨されていたため、安定狭心症かACSかでDAPT期間を差別化する傾向が出てきました。また2011年には欧米でチカグレロルが承認され、2014年には日本でプラスグレルが承認されるなど、新規薬の登場もガイドラインに反映されます。2013年のJCSガイドライン(安定CAD治療)等では、プラスグレル承認前だったため触れられていませんが、2018年改訂版あたりでは「ACSにはプラスグレル使用を考慮」**と明記されました。
  • 2017~2018年:主要な国際DAPT試験の結果が出揃い、ガイドラインがアップデートされました。米国では2016年ACC/AHAガイドラインが、欧州では2017年ESC急性心筋梗塞ガイドライン等が**「DES後DAPTは通常6~12ヶ月。ただし出血高リスクでは短縮可、虚血高リスクでは延長可」との柔軟な表現に変わりました。日本循環器学会も2017年に「抗血栓療法ガイドライン2017」で心房細動合併PCIなどに言及、2018年には「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(改訂版)」を公表しています。この2018年版ガイドラインでは、第二世代DESの安全性向上を踏まえ標準的DAPT期間を6ヶ月としました 。つまり「ステント留置後、少なくとも6ヶ月はDAPT。その後はリスクで調整」という考え方です 。具体的には、安定狭心症で低リスクなら6ヶ月でDAPT終了、ACSなら少なくとも12ヶ月近く継続といった基準が示されています(患者個別のリスクに応じ加減)。またこの頃には、STOPDAPT-2試験の中間結果などから「超短期DAPT+その後P2Y12単剤療法」というコンセプト**も注目され始めました 。
  • 2020年フォーカスアップデート:日本循環器学会は最新エビデンスをまとめ**「冠動脈疾患患者における抗血栓療法ガイドライン 2020年焦点更新版」を発表しました 。ここではまず“日本版高出血リスク(HBR)基準”**が採用され、主要項目1つor副次項目2つ以上該当で高出血リスクと定義されました 。治療戦略としては「まず患者の出血リスクを評価し、高リスク例ではDAPT期間短縮を図る」方針が明確化されています 。具体的な推奨は次の通りです :
    • 出血リスクが高い患者(HBR該当):DAPT期間を1~3ヶ月程度に短縮し、その後速やかに単剤(通常アスピリン単剤)に移行することを考慮する 。安定CAD患者では1ヶ月、ACS患者でも3~6ヶ月でDAPT終了を検討するとされています 。DAPT早期中止後は、消化管出血リスク軽減のためアスピリンではなくP2Y12阻害薬単剤継続も選択肢とされています (例えばSTOPDAPT-2試験のようにクロピドグレル単剤に切替える戦略)。
    • 出血リスクが低く虚血リスクが高い患者:DAPTの長期継続を検討 。ACS患者では基本12ヶ月程度はDAPTを継続し、場合によってはそれ以上延長します 。安定CADでも、高リスク(例:多枝病変のステント治療など)で12ヶ月間問題なくDAPT継続できた場合は最大30ヶ月まで延長を考慮するとされています 。延長の是非は個別判断ですが、2014年報告のDAPT試験(米国)で30ヶ月DAPTによりSTやMI再発が減少した知見などが背景にあります 。
    • その他:**心房細動等で抗凝固薬併用が必要な患者では、極力3剤併用期間を短縮(1ヶ月以内)**し、その後は抗凝固薬+P2Y12阻害薬の2剤とする(アスピリン中止)ことが強調されています 。ビタミンK阻害薬(Warfarin)よりDOACの併用を優先し、出血リスク低減を図るべきとも述べられています 。

以上のように、最新のガイドラインでは**「一律○ヶ月」ではなく患者のリスクプロファイルに応じたDAPT期間の個別化**が推奨されています。薬剤師としては、担当患者がガイドライン上どのカテゴリに属するか(高出血リスクか、高虚血リスクか)を把握し、主治医の治療方針に沿った服薬指導や助言を行うことが求められます。

主要な国内試験とエビデンス

日本発のエビデンスもガイドライン形成に大きく貢献しています。ここではDAPT期間短縮に関する試験と、新規薬剤に関する試験を中心に触れます。

  • RESET試験(2012):第一世代と第二世代のDES混在期に行われたRCTで、安定狭心症患者を対象に3ヶ月DAPT vs 12ヶ月DAPTを比較しました。短期DAPT群にゾタロリムスDES(エベロリムス溶出ステントでも可)、長期群に別のDESを用いるというプロトコルでしたが、結果は3ヶ月群が主要イベントで非劣性を示し、短縮可能性を示唆しました。
  • NIPPON試験(2015) :生体吸収ポリマーDES留置患者3,775例を対象に6ヶ月DAPT vs 18ヶ月DAPTを比較した多施設RCTです。主要心イベント発生率は6ヶ月群2.1%、18ヶ月群1.5%(差0.6%)で、6ヶ月群の非劣性が確認されました 。この結果は「従来1年必要とされたDAPTが半分の期間でも十分」という根拠となり、2017年前後のガイドライン改訂に影響を与えました。
  • STOPDAPT-2試験(2019) :「Short Term DAPT 2」として知られる国内主導の画期的試験です。エベロリムス溶出ステント(コバルトクロム製、XIENCE™)留置患者3,000例超を、1ヶ月DAPT後クロピドグレル単剤 vs 12ヶ月従来DAPTにランダム化比較しました。その結果、1ヶ月DAPT群は12ヶ月群に対し主要複合イベントで非劣性なだけでなく、有意に出血イベントを減少させました 。すなわち**「1ヶ月でDAPT中止しクロピドグレル単剤に切り替えても、1年DAPTと比べ虚血リスクは増やさず出血は減らせる」という大胆な知見です 。この成果は世界的にも注目され、欧米の短期DAPT試験(GLOBAL LEADERSやTWILIGHTなど)とも相まって、ガイドラインの超短期戦略導入を後押ししました。ただしSTOPDAPT-2全体ではACS患者は限定的だったため、ACS患者での安全性検証としてSTOPDAPT-2 ACS試験が追加実施されました。STOPDAPT-2 ACS(2022年公表)ではACS 4,136例を同様に1ヶ月DAPT vs 12ヶ月DAPTで比較しましたが、残念ながら1ヶ月群は非劣性を立証できず**(両群で虚血イベント差が小さく統計パワー不足)との結果でした 。このため、安定CADでは超短期DAPTが選択肢となる一方、ACSでは慎重というスタンスが維持されています。但し、STOPDAPT-2とACSの統合解析では全体として1ヶ月戦略の有効性が示唆されており 、リスクの低いACS例では今後短縮が進む可能性があります。
  • PRASFIT-ACS試験(2014) :前述したように、プラスグレル(低用量) vs クロピドグレルをACS患者で比較した国内第III相比較試験です。結果はプラスグレル群でMACE(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)の発生が相対23%低下し(HR0.77)、大出血発生は同等でした 。統計学的には非劣性検証でしたが、実臨床上プラスグレルの有用性・安全性を示す重要なエビデンスとなり、2019年の欧州ガイドラインでも「日本では低用量プラスグレルが有効」と引用されています 。またプラスグレル関連ではPRASFIT-Elective試験(安定狭心症PCIでの検証)も行われました。
  • PHILO試験(2015) :チカグレロル vs クロピドグレルを日本・韓国・台湾のACS患者801例で比較したRCTです。PLATO試験の東アジア版と位置づけられましたが、主要有効性エンドポイント(心血管死・MI・脳卒中)発生率はチカグレロル群9.0%、クロピドグレル群6.9%と差がつかず、一方で大出血はチカグレロル群が多い結果でした 。このネガティブ結果は東アジアでのチカグレロル普及を鈍らせ、前述のようにプラスグレルが優先される要因となりました。韓国からは同様のTICA-KOREA試験も報告されており、概ね同じ傾向を示しています 。
  • AF合併PCI関連:日本からはAFIRE試験(AF合併安定CADでの抗凝固単剤 vs 複合療法)やOAC-ALONE試験など、抗凝固薬併用下での抗血小板薬省略を検討する研究も発信されています。これらも2020年ガイドラインに反映され、**心房細動患者では原則抗凝固薬+1剤のみ(できれば抗血小板薬は単剤に)**との推奨につながりました 。

以上の試験から、日本におけるDAPT戦略は「より短く・より安全に」という方向へシフトしつつあります。ただし「より短く」はあくまで患者のリスク条件によります。特にACS患者やステント多発留置例では依然として十分な期間(6~12ヶ月以上)のDAPTが重要です。一方、高齢者や出血既往例では極力短くし、場合によってはそもそもステントを留置せず薬物療法やバルーン治療のみとする選択も出てきます。薬剤師はこれら最新の知見と方針を理解し、医師や患者と情報共有する役割が求められます。

薬剤師が押さえるべきポイントまとめ

最後に、薬剤師の立場からPCI後抗血小板療法に関する重要ポイントを整理します:

  • 各薬剤の特徴と服薬指導:
    • チクロピジン: 現在ほとんど使われませんが、処方時は初期2ヶ月間の定期血液検査と**副作用兆候(発熱、喉の痛み、出血斑など)**のモニタリングが必須です 。患者には症状出現時の連絡と服薬中止を指導します。1日2回服用である点にも注意が必要です。
    • クロピドグレル: 1日1回夕食後など決まった時間に服用させ、飲み忘れ防止を図ります。効果発現に個人差があるため、可能なら併用薬の確認(特に一部PPIは避ける)を行います 。抜歯や手術予定がある場合、少なくとも5日前には主治医と相談して休薬調整してもらうよう患者に伝えます。
    • プラスグレル: 1日1回服用の遵守が基本です。年齢・体重・脳卒中既往の3点は禁忌/慎重投与条件ですので該当がないか確認します 。他のP2Y12阻害薬より作用発現が早く強いので、出血予防策(胃保護薬併用や転倒注意など)についてもアドバイスします。例えば高齢患者には歯ブラシを柔らかいものに替える、刃物使用に注意する等の日常的工夫を説明すると良いでしょう。
    • チカグレロル: 必ず12時間毎の服用を守るよう強く伝えます。飲み忘れがあった場合は次回から再開し、2回分を一度に飲まないよう指示します。息切れ症状について事前に説明し、「軽い息苦しさが出るかもしれないが徐々に慣れることが多い」と安心させます(ただし症状が強い場合は受診)。併用薬のOTC含め確認を行い、特にアゾール系抗真菌薬やマクロライド系抗生剤を新規処方されたら医師にチカグレロルとの相互作用を報告するようにします。
    • アスピリン: DAPTの相方であり、多くの場合一生涯続ける薬です 。胃腸障害や出血リスクがあるので、胃潰瘍既往の患者にはPPI併用提案や禁忌薬(NSAIDsなど)チェックをします。患者には「主治医の指示がない限り勝手に中断しない」こと、風邪薬・痛み止めを自己購入しない(必ず相談)ことを説明します。
  • DAPT中止や休薬のリスク管理:
    ステント留置後1~3ヶ月以内のDAPT中断は極めて危険(急性ステント血栓による心筋梗塞リスク)です 。薬剤師は、例えば抜歯や内視鏡手術を控えた患者から「主治医にDAPT止めていいと言われた」と相談があった場合、本当に適切な判断か確認します。ガイドラインでは出血リスクが高い手術でも1ヶ月以上経過していればアスピリンは継続、P2Y12は中止などの推奨がありますが、ケースバイケースです 。もし不明な場合は処方医に問い合わせ、患者自己判断で中断しないよう釘を刺します。また、患者が他科受診する際には**「冠動脈ステント留置中でDAPT服用中」であることを必ず伝える**よう指導します。これは医療連携において非常に重要です 。
  • 出血兆候への対応:
    DAPT中は多少の出血傾向は避けられませんが、黒色便や吐血、過度の皮下出血、止まらない出血など明らかな異常があれば直ちに医療機関受診を促します。特に高齢者は消化管出血や頭蓋内出血のリスクがあるため、「便が黒くタール状になった」「頭が痛くてフラフラする」などは要注意です。薬剤師が定期的に問診し、異変があれば主治医への情報提供を行います。場合によってはDAPTの片方中止(まずはアスピリン中止が多い)やPPI追加など対策が講じられます 。患者には「多少の鼻血やあざは様子見で良いが、大きな出血はすぐ受診」と具体例を挙げて説明します。
  • 相互作用と重複療法のチェック:
    OTC含めた薬剤確認は基本ですが、特にNSAIDs系鎮痛薬の常用はDAPTと合わせて消化管出血リスクが増すため要注意です。市販のイブプロフェンやアスピリン含有薬を患者が自己判断で使っていないか確認し、必要な場合はアセトアミノフェンに代替するなど助言します。また、他科から抗凝固薬(ワルファリン、DOAC)が処方されているケースでは3剤併用期間の長期化は厳禁です 。心房細動患者などで複数科にまたがる場合、薬剤師も疑義照会や情報共有を行い、安全な併用計画に誘導します。特に退院時とは異なる科でP2Y12が継続されたり中止されたりしていないか、重複処方・処方漏れのチェックも欠かせません。
  • 最新エビデンスへのキャッチアップ:
    抗血栓療法は日進月歩で、DAPT期間短縮やモノテラピー(例えばアスピリンレス戦略)など新概念が次々登場しています 。薬剤師も国内外のガイドライン改訂情報や主要論文(例えばSTOPDAPTシリーズや欧米のONXY ONE試験等)に目を配り、**「なぜこの患者は3ヶ月でDAPT中止になったのか」など背景を理解できるように努めます。その上で患者から質問があれば平易に説明し、不安の軽減に努めます。例えば「昔は1年飲むって聞いたのに先生から半年でいいと言われたけど大丈夫?」と問われたら、「ステントも薬も良くなって、最近は半年で十分と分かったからですよ 。先生も患者さんの出血リスクを考えて決めたので安心してください。」**とエビデンスを踏まえて答えられると理想です。

本稿では日本循環器学会ガイドラインおよび主要試験論文を参照し、内容を整理しました。 ほか. 今後も新たなエビデンスにより推奨は変化し得るため、薬剤師として継続的な情報アップデートと臨機応変な対応が求められます。患者のQOLと生命予後を守るDAPTマネジメントに、薬剤師も積極的に関与していきましょう。

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※本記事は薬学生および薬剤師など、医療関係者を対象とした教育・学術目的の情報提供です。医薬品の販売促進を目的としたものではありません。
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