はじめに:薬価が下がるって本当?
薬局で働いていると「また薬価が下がった…」という話を耳にしませんか?医療用医薬品の価格(薬価)は改定のたびに下がる傾向があります 。実はこれ、単なる偶然ではなく、日本の医療制度に組み込まれた仕組みなのです。若手薬剤師の皆さんに向けて、薬価が下がる理由を歴史・制度・経済の観点からやさしく解説します。薬価制度の基本から、政策的な狙い、薬局経営へのインパクトまで、この一記事で「なるほど!」と思える理解を目指しましょう。
薬価とは何か:公定価格と市場価格のギャップ
まず薬価とは何でしょうか。薬価とは国(厚生労働省)が公定価格として定めた医療用医薬品の価格です 。病院や薬局はこの薬価に基づいて薬剤費を保険請求します。しかし実際の取引では、卸売業者と医療機関・薬局との間で薬は薬価より低い価格で売買されています 。つまり、表向きは定価販売のように見えて、裏ではスーパーマーケットの特売のような価格競争が起きているのです 。
この公定価格(薬価)と市場での仕入れ価格の差額こそが、医療機関・薬局にとっての利益になります。これを「薬価差益」と呼びます 。薬局や病院はできるだけ安く仕入れて、この差益を確保しようとします。競合品が多い分野(例えば生活習慣病治療薬など)では値引き交渉も激しく、市場価格が薬価から大きく割り引かれることもしばしばです 。
**ポイント:**薬価=公定の定価、実勢価格=実際の仕入れ値。この差が薬局の儲け(薬価差益)になる。だから現場では値引き交渉が行われ、市場価格は下がりやすいのです。
薬価改定の仕組み:市場価格に合わせて値下げ
薬価が下がる最大の理由は、国が薬価改定によって「公定価格を市場価格に近づける調整」を行うからです。薬価改定とは定期的に薬価を見直す制度で、原則2年に1度、診療報酬改定と同時に実施されてきました(近年は後述のとおり毎年改定に移行) 。改定では膨大な品目の薬価が見直されますが、その基本は市場実勢価格に合わせた引き下げです 。
厚生労働省は改定前に全国の医療機関や薬局を対象に実際の仕入れ価格の調査(薬価調査)を行います 。この調査で、公定価格(現行薬価)と市場価格の差が一定以上あると判断された場合、その差を埋めるように薬価が引き下げられます 。これにより、公定価格と市場価格の**乖離(かいり)**を是正するわけです。
乖離率と調整幅
薬価改定の話題でよく出てくる乖離率とは、公定価格と市場実勢価格の差がどれくらいあるかを示す割合です 。計算式は例えば「改定前薬価100円、市場価格90円」なら乖離率=(100-90)÷100×100=10%という具合 。乖離率が大きいほど「実勢価格に比べて薬価が高すぎる」ということになり、大幅な引き下げ対象になりやすいのです。
もっとも、市場価格にピッタリ薬価を合わせてしまうと、流通に必要な費用(配送費や在庫リスクなど)をカバーできなくなります。そこで国は調整幅と呼ばれるマージンを残すルールを設けています 。現在は改定前薬価の2%を目安に調整幅として維持する決まりで、乖離率からこの2%を引いた分だけ薬価を下げるようにしています 。先ほどの例で乖離率10%なら、新薬価は8%引き下げの92円となる計算です 。つまり、2%程度は余裕(差益)を残しつつ調整しているのです。
薬価改定はマイナスが基本
こうした仕組みにより、薬価改定時にはほとんどの薬で値下げが行われます 。公定価格と市場価格の差を詰める以上、値上げではなく値下げが原則だからです。実際、ここ数十年の改定では毎回平均5~6%前後のマイナス改定となっており、2018年度の改定では制度見直しの影響もあって平均7.48%もの大幅引き下げが行われました 。歴史的に見ても1967年に薬価基準制度による初の全面改定が実施されて以来、薬価改定は一貫してマイナス改定の連続です (ごく例外的にプラス改定になった年もありますが、それは消費税対応など特殊事情によるものです)。
改定頻度も近年変化しています。従来は2年に1度でしたが、2021年度からは「中間年改定」も導入され、毎年薬価を見直す体制になりました 。これは後述するように、医療費抑制をさらに加速させる政策的な動きです。
**ポイント:**薬価改定とは「実勢価格との差を埋めるための値下げ調整」。乖離率から2%を引いた幅で下げるルールがあるため、一度薬価収載された薬でも改定のたびに安くなっていくのが通例です。
薬価差益の歴史:かつて25%だった利益率
薬価制度の歴史を紐解くと、薬価差益を巡る変遷が見えてきます。実は昔の日本では、薬の仕入れ値と薬価の差益が医療機関の重要な収入源でした。そのため、薬をたくさん処方したり高価な薬を使ったりするインセンティブが働き、「薬漬け医療」「過剰投与」が社会問題となっていたのです 。
1989年(平成元年)には衆議院の委員会で、薬価差益が年間約1兆3,000億円にも上り、当時の薬剤費の25%に達すると報告されました 。薬剤費の4分の1が医療機関の薬売買マージンだったと聞けば、その大きさに驚くでしょう。これを受けて「本来の医療のために処方と調剤を分業し、医師が薬を売って儲ける仕組みを是正すべきだ」という議論が高まりました 。ここから医薬分業(医師は処方に専念し、調剤は薬剤師が行う体制)の推進が加速したのです。
医薬分業の浸透とともに、国は薬価差益を縮小するための施策を進めました。繰り返される薬価改定で差益幅そのものを削り、薬価差(差益率)はかつて20%前後あったものが2010年代には8%程度まで低下しています 。これは、薬価差益に過度に依存しない医療提供体制への転換を図った結果と言えます。1990年前後には「薬剤費適正化元年」などと称して、製薬企業と卸間の過度な値引き交渉を是正する取り組みもなされました(値引き補填の禁止や価格透明化の要請など) 。こうした歴史的経緯から、薬価差益は徐々に縮小し、薬で稼ぐ時代からサービスで価値を提供する時代へとシフトが図られてきたのです。
**ポイント:**昔は薬を売って得る利益(薬価差益)が病院・薬局収入の大きな割合を占め、結果として薬の出し過ぎが問題となった。国は分業の推進や薬価引き下げで差益縮小を進め、現在では薬価差益率は一桁台にまで低減している 。
医療費抑制という政策的意図
薬価が下がり続ける背景には、日本の医療費事情と財政状況があります。少子高齢化が進む我が国では、年々医療費が増加し国家財政を圧迫しています。現時点(2019年度)で国民医療費は約44.4兆円にも上り、そのうち薬剤費は約9.6兆円(実に全体の約21%)を占めています 。薬剤費の規模は、防衛費(同年約5兆円)と比較しても倍近くあり、国家予算に占める存在感は非常に大きいのです 。
日本の財政は慢性的な赤字であり、加えて2025年には団塊の世代が75歳以上となって医療費のさらなる増大が予想されています 。このため政府にとって医療費の抑制は喫緊の課題となっています 。薬価引き下げは、その医療費抑制策の柱の一つです 。実際、過去20年で倍増した薬剤費に歯止めをかけるべく、国は薬価の継続的な引き下げ方針を掲げています 。
言い換えれば、薬価改定による値下げは国家的なコストセーブ策なのです。薬の値段が下がれば患者の自己負担も減り 、公的医療保険から支出される薬剤費も減少します 。高齢化に伴って薬の使われる量そのものを急激に減らすことは難しいため、薬剤費の削減は薬価を下げることとジェネリック普及に頼らざるを得ないというのが現状です 。
もちろん、この政策には副作用も指摘されています。薬価の引き下げが続けば製薬企業の収益は減り、新薬開発のインセンティブが弱まる恐れがあります 。また、低収益のために製造中止や供給不安定になる薬も出かねません。特に毎年改定となると、イノベーション評価や安定供給に逆行するとの批判も業界から出ており、中間年改定(毎年改定)の是非を問う声もあります 。こうしたバランスを取るため、国は一定の配慮策(後述の新薬創出加算など)も講じていますが、医療費抑制という大方針の下では薬価マイナス改定の流れは今後も基本的に続くと見られています 。
**ポイント:**なぜ薬価を下げ続けるのか――それは日本の医療費が膨大で、財政的に薬価削減が避けられないからです。高齢化で医療需要が増える中、薬剤費削減の現実解が薬価の引き下げなのです 。ただし下げすぎれば新薬開発力や安定供給に影響する恐れもあるため、その点の議論も続いています。
ジェネリック(後発医薬品)の普及が与えた影響
薬価が下がる理由として忘れてはならないのが、ジェネリック医薬品の登場と普及です。新薬の特許が切れると、他社から有効成分が同じ後発医薬品(ジェネリック)が発売されます。ジェネリックは先発品より価格が安く設定されるため、これが市場に出ると先発医薬品の希少価値は低下し、薬価も引き下げられる方向になります 。つまり、新薬が独占的だった間は高価だった薬も、ジェネリック参入で「安売り合戦」の様相を呈するのです。
実際、ジェネリックが出て一定期間経過した先発品(長期収載品と呼ばれます)は、政策的にも大幅な薬価引き下げの対象となります。2018年度の制度改革では、ジェネリック登場後10年超の先発品はジェネリック価格の2.5倍まで引き下げ、さらに置換え率(シェア)が高ければ6年かけてジェネリックと同等の価格まで下げること、低ければ10年かけてジェネリックの1.5倍まで下げることが決まりました 。これは「いつまでも高い先発品を使い続けるのではなく、いずれジェネリック並みの価格水準にする」という明確なメッセージです。
ジェネリックそのものの価格設定も、初収載時から先発より低め(通常50%程度)に定められます。さらにジェネリック同士もメーカー間で価格競争が激しいため、市場実勢価格は急速に下がりやすい傾向があります 。その結果、ジェネリックの使用拡大は全体として薬価乖離率を押し上げる要因となりました (実勢価格が下がりやすいため公定価格とのギャップが大きくなり、改定で一気に薬価が下がる品目が増える)。2017年の薬価調査では、平均乖離率が9.1%と高めでしたが、その背景には競争の激しい後発医薬品の使用拡大があったと分析されています 。
政府は医療費適正化の切り札としてジェネリック普及を強力に推進しています。調剤報酬上も後発医薬品調剤体制加算を設け、薬局ごとにジェネリック調剤割合の目標を掲げました。2018年頃から「数量ベースで80%」という目標が掲げられ 、2023年現在その目標は概ね達成されています (ただし金額ベースではまだ56.7%程度で、今後は金額ベース65%以上を目指す目標が新たに設定されています )。このようにジェネリックの普及=薬価引き下げの促進と位置付けられており、薬価制度とジェネリック政策は車の両輪と言える関係です。
**ポイント:**ジェネリック医薬品は薬価を押し下げる大きな要因です。先発品は特許切れ後に徐々にジェネリック並みの価格へ誘導され、ジェネリック間でも値下げ競争が起こります。そのためジェネリック普及は薬剤費削減策として推奨され、薬価政策に組み込まれています 。
薬価再算定と特例措置:さらに進む値下げの仕掛け
通常の薬価改定に加えて、特定の条件下で薬価を見直す「再算定」制度も薬価を下げる一因です。再算定とは、ある医薬品について特別な事情が生じた場合に個別に薬価を計算し直す仕組みです。その代表例が市場拡大再算定と呼ばれるものです。
市場拡大再算定とは
市場拡大再算定は、薬価収載時の想定を上回って売上が大きく伸びた医薬品の薬価を引き下げるルールです 。例えば、新薬上市時には「この薬の年間売上は〇百億円程度」と見込んで価格を付けますが、適応拡大や予想外の需要増で売上が何倍にも膨れ上がるケースがあります。そのような薬については、「儲かりすぎているのだから価格を下げて保険財政へのインパクトを軽減しよう」というのが市場拡大再算定の考え方です 。
通常の市場拡大再算定では、売上規模が一定以上になった薬を対象に所定の引き下げ率が適用されます 。さらに2016年度の薬価制度改革では、特例拡大再算定というルールが新設されました 。これは特に売上高が極めて大きい薬に対して、通常より厳しい引き下げ(例えば価格半減レベル)を行う仕組みです 。この特例は、かつてC型肝炎治療薬「ハーボニー」が爆発的ヒットとなり医療保険財政を圧迫しかねないと懸念されたことが契機で導入されたものです 。製薬業界からは「突然の大幅値下げはイノベーションを阻害する」と強い反発もありましたが 、高額薬剤によるコスト増に対応するため国は踏み切ったのです。
さらに2018年度からは、薬価改定を待たず臨時に薬価を引き下げる仕組みも始まりました 。具体的には、市場規模が年間350億円を超えた医薬品について、年4回ある新薬収載のタイミング(つまり四半期ごと)で市場拡大再算定ルールに基づく値下げを行う制度です 。これにより、急成長する薬は次の改定まで1~2年待たずとも途中で価格が下がることになりました。まさに「待ったなし」でコスト調整する仕掛けが整えられたのです。
その他の再算定
再算定には他にも、用法用量変化再算定(主な用法・用量が変わり治療に使う量が大きく変動した場合の値下げ)、効能変化再算定(適応拡大などで市場規模が変わった場合の値下げ)があります 。例えば一日量が増えるような用法変更があれば薬価を見直し、患者一人当たりの薬剤コストが大幅に増えないよう調整します。また逆に、不採算品再算定という値上げ方向のルールもあります 。これは薬価が下がりすぎて採算割れになり、製造販売が難しくなる恐れのある薬について、コストに見合うよう薬価を引き上げ再設定する制度です 。安定供給の観点から最低限の措置として設けられていますが、適用される品目は限られています。
こうした再算定や特例措置は、一部の薬にスポットライトを当てて価格を見直す仕組みであり、総じて薬価引き下げをさらに進める役割を果たしています。近年では費用対効果評価(薬の効果と費用を評価し高すぎる薬価を調整する手法)も試行的に導入され、高額薬の値下げに活用されています 。国はあの手この手で薬剤費の適正化を図っているわけですね。
**ポイント:**通常改定とは別に、売れすぎた薬・使い方が変わった薬などに個別の値下げルール(市場拡大再算定等)がある。2016年には特例措置も加わり、高額薬には容赦なく大幅引き下げが適用されるようになりました 。再算定制度は「想定外の事態で儲けすぎになった薬の価格是正」と言え、薬価が下がる要因をさらに増やしています。
薬価引き下げが薬局経営に与える影響
では、こうした薬価の低下傾向は薬局経営にどんな影響を及ぼすのでしょうか。現場の実感に近いところでいくつか考えてみます。
薬価差益による収益減少と在庫調整
薬価が下がれば当然ながら薬価差益は縮小します 。調剤報酬には技術料(調剤基本料や服薬指導料など)と薬剤料がありますが、そのうち薬剤料部分の利益率が下がるわけです。改定のたびに薬の価値(価格)が目減りするため、多くの薬局・病院では改定直前に在庫を圧縮する対応を取ります 。改定後に在庫を抱えていると、その分在庫評価損が出てしまうからです。具体的には「改定直前に卸に返品できるものは返品し、納品も控えめにする」「改定前に必要最低限だけ仕入れ、在庫をできるだけ持ち越さない」といった工夫がされています。とはいえ、この在庫調整には人手も時間もかかり、返品対応など現場の負担増にもつながっています 。
技術料重視へのシフト
薬価差益があまり期待できなくなると、薬局は技術料で稼ぐ方向へシフトせざるを得ません。すなわち、調剤基本料や服薬指導、在宅医療、地域連携といった付加価値サービスで収益を確保する努力が求められます。幸い、調剤報酬体系も近年は「かかりつけ薬剤師」制度や在宅業務の評価など、薬局の機能強化に報酬を厚くする動きがあります。薬価差益に頼らずとも経営が成り立つよう、収益構造の転換が図られているとも言えます。
一方で、従来からの小規模薬局にとってはこの転換は簡単ではありません。処方せんを待って薬を出すだけでは立ち行かない時代になりつつあり 、経営者の高齢化も相まってM&A(薬局の統合・売却)に踏み切る例も増えています 。厳しい言い方をすれば、「待ちの調剤」のままでは淘汰され、生き残るには在宅医療への取り組みや地域密着のかかりつけ機能発揮など能動的な役割が求められているのです 。
ジェネリック推進と収益構造のジレンマ
薬局にとってジェネリック普及は二律背反の面があります。国策としてジェネリック調剤を推進する以上、高い後発品使用率を達成して加算を算定することが経営上重要です 。しかし一方で、ジェネリックは先発品に比べ薬価そのものが低く、卸値も安いため絶対額の薬価差益は小さくなりがちです。「ジェネリックに切り替えたら薬局の儲けが減った」という声を現場で聞くこともあるでしょう。実際、中小薬局の中には加算取得をあきらめてまで先発品中心にシフトし、あえて差益額を確保しようとする“逆行”も見られるとの指摘があります 。ただし国も黙っておらず、一定の後発品使用率に満たない薬局には調剤報酬を減点するペナルティを課すなどの対抗策も導入しています 。最終的には、やはりジェネリック重視の流れに薬局も乗らざるを得ません。
製薬企業・卸への影響と連鎖
薬価が下がる影響は薬局だけでなく、仕入れ先である製薬企業や医薬品卸売業者にも及びます。メーカーにとっては売上単価の低下で収益減となり、新薬開発費の回収が難しくなる可能性があります 。卸も流通マージンが細る中で配送コストや在庫管理を担う厳しい経営環境です。近年のジェネリック供給不安(工場の品質問題や生産中止)には、低薬価による採算性の問題も一因と言われます 。薬価を下げすぎれば将来的に患者さんに薬が届かない事態も起こりかねず、この点は政策当局も頭を悩ませています。2023年の薬価改定では、原材料高騰や流通負担増に配慮し、一部品目で引き下げ幅を緩和する措置も取られました 。薬価を下げたい政府と、何とか踏みとどまってほしい現場とのせめぎ合いが続いている状況です。
**ポイント:**薬価が下がると薬局は仕入れ差益による収入が減り、在庫管理にも気を使う必要があります。結果として技術料収入への依存が高まり、サービス強化や業務拡大(在宅など)が生き残りの鍵となります 。ジェネリック推進も収益上は悩ましい面がありますが、国の方針に沿った経営戦略が求められます。
おわりに:薬価引き下げの流れとこれからの薬局
以上、「薬価がなぜ下がるのか」について歴史や制度、経済的背景を網羅的に解説しました。まとめると、薬価が下がるのは制度的に当然の帰結なのです。市場の実勢価格に合わせる調整メカニズム 、薬価差益縮小の歴史 、医療費抑制の政策的必然 、ジェネリック普及の影響 、各種再算定ルールの存在 ――これら全てが絡み合い、薬価は**「上がりづらく下がりやすい」**ものとなっています。
若手薬剤師の方には、ぜひこの背景を踏まえて日々の業務を見つめ直してほしいと思います。薬価が下がる理由を知れば、「なぜ在庫を減らす必要があるのか」「なぜジェネリックを勧めるのか」「なぜ調剤報酬が手厚く設計されているのか」といった疑問にも答えが見えてくるでしょう。薬価制度の理解は、薬局経営の戦略を考える上でも不可欠です。薬価差益に頼らない経営をどう実現するか、薬剤師としてどんな付加価値を提供できるか――薬価引き下げの流れは、裏を返せば私たち薬剤師が専門性で勝負する時代が来たことを意味します。
高齢化が進む2030年代に向け、医療費適正化のプレッシャーは一段と増すでしょう。薬価改定も頻回化し、薬局を取り巻く環境は厳しさを増すかもしれません。しかしその先には、薬剤師本来の価値を発揮できるフィールドの拡大も待っているはずです。薬価が下がる理由を正しく理解し、したたかに対応策を講じることで、ぜひ現場で輝いてください。私たち薬剤師が「薬を渡すだけ」でなく「人に寄り添う専門家」として活躍する未来に向けて、共に頑張っていきましょう!


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